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| (NEWS) 個人アニメ作家にFlashがくれた“力”
安月給で馬車馬のように働く末端クリエイターの環境に、1人の制作マンが疑問を持った。「ネットがあれば、個人クリエイターでもビジネスできるはず」――彼は都内を飛び出して島根に移住。個人製作で食べていこうと決めた。
映像も音声も、ほとんど1人で作った個人製作のFlashアニメ「古墳ギャルのコフィー」「秘密結社 鷹の爪」が、4月5日からテレビで放映されている。1人のクリエイターが、作品の力だけでテレビ局と渡り合う――「Flashがなければあり得なかった」と、作者のフロッグマンこと、蛙男商会会長・小野亮さん(34)は語る。
「年収60万円ぐらいでした」――2002年、31歳で島根県に来た当時、生活は苦しかった。夢は映画監督。18歳から映画・テレビ業界で制作スタッフとして働いた後、結婚を機に島根に移住した。「映像制作は島根でもできるはず。Webムービーで発信すればいい」とそう考えていた。
甘かった。島根には、役者もいなければスタッフもおらず、実写映像の自主制作は不可能に近かった。100坪で家賃3万円と土地ばかり広い家に住み、町の祭りの撮影など、近所の人からたまに頼まれる映像仕事でわずかな謝礼金をもらいながら、妻の仕事の収入と、貯金を頼りに暮らした。
東京で働いていたころ、映画やテレビ業界の仕組みに疑問を持っていた。映画がヒットし、何十億円もの興行収入が入っても「製作委員会」が持って行く。末端のクリエイターは、寝る間もなく働いても月給たった10万円――そんなケースが珍しくなかった。
製作委員会との意識のずれも感じた。委員会を構成する配給会社や出版社──出資者──が要求する「売れる作品」は、クリエイターが作りたい作品とは必ずしも一致しない。しかし製作費を出してもらう以上、委員会には逆らえない。
テレビ番組でも、クリエイターの立場は弱い。クリエイターが所属する制作会社は、テレビ局の下請け。安い製作費で番組を作らざるを得ないケースが多く、給料も安かった。生活が困窮し、能力があっても辞めざるを得ないクリエイターも見てきた。
一方で、巨額の製作費を出せず、コンテンツ不足に悩むメディアも多い。「個人クリエイターが安価にコンテンツ製作できれば、ニーズはきっとある」。作りたい物を作りながら、クリエイターにもお金が回ってくる仕組みが、ネットを使えば作れそうな気がしていた。
■Flashアニメならできる
とはいえ、役者もスタッフもいない島根では、実写映像の制作は無理。目を付けたのがFlashアニメだ。「Flashなら1人でも作れる。これだ!と思いました」。アニメ制作の経験はゼロ。映画業界出身のFlash作家・青池良輔さんの作品に出会い、自分でもできそうと感じた。
マシンは、近所のスーパー「ジャスコ」で8万円で買った、型落ちのSOTEC「Afina」。ストーリーを作り、声色を使い分けながら音声を録音し、あらかじめ描いておいた絵と組み合わせ、Flashで簡単な動きをつけた。
同じ絵は2度と描けないから、最初に描いた絵を最後まで使い回した。通常のテレビアニメと比べると動きは極端に少ないが、ストーリーやせりふ回しで勝負。数分のストーリーを、数時間から数日で作れるノウハウを確立した。
初の作品「菅井君と家族石」は、都内で活躍していた黒人ソウルミュージシャン家族が島根に移住し、極貧にあえぎながらも面白おかしく暮らしていくというシュールなギャグストーリー。島根で苦しい生活を続ける自分自身の境遇を重ね合わせていた。「半分自暴自棄でした」
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by NEWS=MAN | Apr.08(Sat)
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| 2004年2月の公開後、雑誌やニュースサイトで紹介され、8月には1日に4万ページビューを稼ぐ人気コンテンツに。しかしページビューでは食べていけない。仕事が欲しかった。
作品を地元企業やテレビ局に持ち込み「アニメコンテンツが必要な時に声をかけてください」と売り込んだが、反応はほとんどない。妻の稼ぎを頼って食いつないでいた。
そんな折、妻が妊娠し、仕事を辞めざるをえなくなる。生活はいよいよ困窮し、出産費用の50万円も払えそうにない。「自分が産婆になってとり上げるか」――こんな会話も、冗談ではなかった。
映像制作をあきらめ、近くにできたローソンの店員になろうと本気で考えたが、妻に止められた。なんとか食いつながないと――賞金付きのコンテストを見つけては「菅井君~」を出品したが、ことごとく落ちた。
■海苔に救われる
生活を救ったのは、近所の海苔(のり)店「海産物松村」だった。「菅井君~」のキャラを使ったネットCMを、ECサイトに掲載してくれたのだ。CMは話題になり、Flash CMの製作依頼が次々に来た。東芝EMIの「セックスマシンガンズ」のCMや、リクルートの就職サイト「リクナビ」用の企業のガイダンスCMなど、大手企業の仕事も受けた。
海苔のCMの1コマ
とはいえCM制作は、あくまで副業だ。「作品の収入で食えるようにならないと意味がない。1つの作品に全身全霊を注ぎ込めない状況は“嘘”だと思う」。「菅井君~」のDVDはネットやCD店で販売し、5600枚を売り上げた。
次のチャンスもすぐ訪れた。ポイントゲートが運営する「CMサイト」が、小野さんが温めていた新アニメ「古墳ギャルのコフィー」を、独占で借り上げてくれたのだ。「レンタル料だけで1年食べていけました」
コフィーは、前方後円墳型の女子高生が主人公の物語。「前方後円墳の形って女性っぽい」「“古墳のギャル=古ギャル”って言ってみたい」――そんな発想で作ったといい、月間15万ユーザーが視聴する人気コンテンツに育った。
コフィー(左)とコフィーのパパ
■蛙男、テレビに戻る
Flashアニメ関連のイベントにも参加し、いくつかのプロダクションに声をかけられた。その1つのDLEと昨年末に組むことに決め、次回作「秘密結社 鷹の爪」のテレビ化に向けて動き始める。
「一般の人は、ネット=マイナー、テレビ=メジャー、という意識。Flashでビジネスをやっていくとなると、テレビは避けて通れない」
写真
DLEは、ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパンと共同でテレビ化を企画。両社をスポンサーとして、テレビ朝日のアニメ深夜枠に売り込んだ。
テレビアニメといえば、何十人ものスタッフが、1話あたり1000万円程度かけて作るのが常識。たった1人で、数時間~数日で作ってしまう“制作費ほぼゼロ”のFlashアニメは業界を驚かせ、テレビ局の目を引いた。
「面白かったとしか言いようがない。深夜枠は持ち込み作品の多い激戦区だが、5人のプロデューサーで担当を取り合ったほど」――テレビ朝日担当プロデューサーの西口なおみさんは、小野さんの作品についてこう語っている。
テレビ化が決まり、都内DLEオフィス内に製作スタジオを作った。音声の録音は、茶色い袋に入った掛け布団をかぶって行う。「掛け布団ではない。“布団素材のスタジオ”だ」(小野さん)
「クリエイターがFlashやネットというメディアを持ったことで、テレビ局とも対等に付き合えるようになった」とDLEの椎木隆太社長は話す。局から提示された条件が悪ければ、「ネットで放映するからテレビはいらない」と言える。お金をかけずに作れるため、製作委員会による資金調達も不要。作りたい作品を作れる。
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by NEWS=MAN | Apr.08(Sat)
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| 今後は、テレビで高めた認知を活用し、DVDやグッズ販売で稼ぐ計画だ。すでに「鷹の爪」のフィギュアを作り、ネット販売を始めた。
「個人が作ったコンテンツで億単位のビジネスが創出できれば、個人クリエイターに未来が示せる」――小野さんはこんなふうに夢を語る。
――あなたにとって、ITとは
「ネットがなければ、個人で映像製作をやること自体が無理。ネット以前は、映像作品を作っても、自主上映会をやったり、コンテストに出したり、テレビに出したりしないと見てもらえなかった。今なら、PCでカチャカチャカチャやるだけで世界中に公開できる。コンテンツが面白ければそれを宣伝してくれるニュースサイトも出てくる」
困窮し、自暴自棄になっていた3年前を振り返ってこう語る。「ITは、地獄から這い上がるための、蜘蛛の糸みたいなもの」
「映像をビジネスとしてやってきた。いまさら趣味なんて言うつもりもないし、芸術と言うつもりもさらさらない。うちの子ども食えなきゃ意味がない」
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by NEWS=MAN | Apr.08(Sat)
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補足
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| <雑記帳>「脱ひきこもり」のカフェ、京都にオープン [ 04月10日 18時58分 ] ◇ひきこもりから立ち直った若者が就労体験する「マドリッド カフェ」(075・752・0289)が10日、京都市東山区にオープンした。
◇NPO法人「京都オレンジの会」が「働く自信をつけて」と開設し、店員は22~35歳の3人。木目調のおしゃれな内装で、コーヒー350円。
◇店名は「気軽に集える場所に」と情熱の国スペインの首都から命名。「コーヒーは熱すぎず、社会復帰の意欲は、どこまでも熱く」と同会。【村瀬達男】
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by 7777 | Apr.11(Tue)
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