(ボディサバつづき) |
|
|
-------------------------------------------(11) 20 殺人被害者写真#2 スーツを着た白人が数箇所の刀傷とともに、 血まみれで自室に横たわっている。
21 殺人被害者写真#3 年配の神父姿の男が不自然な体勢で、 横たわっている。目は見開いているものの、 その口からは、だらしなく舌がヨダレともに、 のぞいている。
22 殺人被害者写真#4 アジア系の太った男の射殺死体。
23 マグレガーのデスク マクレガー「1枚目はダウンタウンの一角で毒殺された 麻薬の売人。2枚目はサンフランシスコの有力政治家だ。 自室で斬殺された。3枚目は市内の教会の神父。素手で 絞殺だ。抵抗したようだが、とんでもない怪力で首の骨を 砕かれている。最後のやつはチャイナタウンのごみ捨て場 にあった射殺体だ。明らかに、同一人物による犯行では ない」 ---------------------------------------------(12) タカギ「しかし、いつも同じメッセージを残すことを忘れない」 マクレガー「そうだ。グループ犯による、何らかの政治的 意図があっての犯行なのだろうか・・・?」 タカギ「たしかに、天誅というのは、日本のサムライ時代の 終焉期である明治維新の頃、シンセングミというテロリスト グループが要人暗殺の際に用いた合言葉です。 しかし、悪人正機とは全く関連性がないはず」 マクレガー「その悪人正機という言葉について、 もう一度、話してくれないか?」 タカギ「僕もハイスクール時代にちょっとかじった程度です。 鎌倉時代当時の日本には末法思想というのが、はやって いました。どういうことかいうと・・・、あと200年 でこの世の終わりが来るから、それに向かって一生懸命 生きなさい、とかいう感じの思想です」 マクレガー「ふむ、ふむ、・・・。私の両親は、私を ピューリタンの教会に連れて行ったが、私がそこで 聞いたハナシでも、初代キリスト教会では、キリストの 昇天後、すぐに世界が終わり、キリストが雲に乗って再臨 する、という考えがあったらしい」 -------------------------------------------------------------------------------(13) タカギ「人間は勝手に話を作ってしまうんですね・・・。 鎌倉時代の話に戻りますが、・・・ちょうど、そういった 末法思想の世相を背景に、3つの新しい仏教宗派が誕生 したんですよ。そのうちの一つが浄土真宗。開祖が親鸞。 この親鸞が唱えたのが、 ” 悪人正機 ” ・・・すなわち、悪人こそが、この世で救われるべき存在である、 と」 マクレガー「ふふふ・・・、悪人こそが救われるべき・・・か。 キリストも罪人を救うために、この世に来た、と言った」 タカギ「・・・しかし、私たちは、宗教家ではありません。 議論したところで、犯人の心理は分からないでしょう。 ただ、このタイプの殺人者は、宗教の教理の好きな ところだけを取って、殺人を正当化する独善家です。 私たちに出来ることは、手がかりをつなぎ合わせて逮捕、 ・・・そして刑務所にぶち込めばいいんです」 マグレガー「シンプルだが、見事なモチベーションだ。 私たちは弁護士ではない。警官は、そのくらいシンプル でいい。しかし、悪人正機の事は、すこし頭においとくよ」 タカギ、しばらく黙りこむ。 ------------------------------------------------(14) マクレガー「現在の情報だけでは、情報不足だ・・・、 しかし君が来てくれて、本当によかった。君の知識のおかげで、 とりあえず、いくらか、関係がありそうな組織をしぼれる」 一瞬唖然として、テレを隠すように顔を逸らし、 タカギ「僕はまだ何もしてないですよ・・・」 マクレガー「なにを言う、これで犯人像にたどりつける道が 見えてきた。間違いなく君のおかげだ。」 タカギ「そうですか、うれしいです」 マグレガー「君のサンフランシスコ滞在が長くなりそうだから、 いいアパートをさがしてある。今日はもう休んでくれ」 とつぜん、ガタガタ!! と物音。廊下の闇に 響き渡る。 マグレガ-とタカギ「なんだ!!」 タカギ、銃を構える。 銃を構えたまま、廊下に出る。
24 警察署・廊下(夜) 銃を構えたタカギ。 闇に人影。 マグレガ-、廊下のライトをつける。 --------------------------------------------------------(15) ライトに照らし出される後ろ姿の 私服の黒人。 黒人、後ろ姿のまま、手をあげる。 タカギ「動くな!」 マグレガ-「・・・マイクか?」 タカギ「マイク?」 手をあげたまま、振り返る黒人。 マグレガ-「やっぱり、マイクじゃないか」 マイクのそばに、たおれたゴミ箱。 マイク「暗かったから、ゴミ箱に足を ぶつけちまった」 マグレガ-「ジョン、銃を下ろしてくれ」 銃をおろすタカギ。 マグレガ-「彼は、マイク、同僚の警官だ」 マイク「ジョン?はじめてだな。驚かせて悪かった」 マグレガ-「例の殺人事件の捜査のために 東京から来てもらったんだ」 マイク「ああ、君がそうか」 タカギ「はじめまして。ジョン・タカギです。」 マイク、タカギの側に歩み寄る。
| |
|
11月25日(金) | トラックバック(0) | コメント(0) | 進行中プラン(著作権は高嶺&ルウヴィ) | 管理
|