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リコールFROM80sプラン

66 チャンの部屋(室内・昼)
ボクとクララを中へ招き入れるチャン。着替えるチャン。
ロベルトのモノログ「チャンは、アンダーウェアのみを付けていた身体を隠すために、急いで、ダーク・カラーの薄いマテリアルのシャツとタイト・ジーンズを着た」
  ジーンズをはくとき、チャンの腰にあるタトゥーが見える。
  一瞬、それに気づくロベルト。
  すこし変わったデザインのタトゥー。
チャン「ロベルト……だったかしら……、この前ワタシが言ってたおもしろい物を見に来たんでしょ?」
  チャンは微笑み、奥の部屋へ、ロベルトらを案内。
奥の部屋には、その1週間ほど前に出会った、ミスター・アカワがいる。

ロベルトのモノログ「ミスター・アカワは、日本のエレクトロニクス・メーカーからヨーロッパに派遣された男だった」
ややカールした髪に、無精ひげ……、ボヘミアン・ルッキングのアカワ。
ロベルトのモノログ「彼は、ビデオカメラをローマで販売しようとしていた」
アカワ「ボクが何故こんなに忙しくて難しい仕事についてしまったのか分からないけど、ボクは自分の仕事を気に入ってる。しかし、時々バケーションを取って気持ちをOFFにする事で、ボクはなんとか、業務をつづけてるよ。バケーションはいい」
  アカワは、奥の部屋のソファに、ゆっくりと腰掛けて、ソルティドッグを飲んでいる。
ロベルトのモノログ「チャンは、ミスター・アカワと、バー・レストランで知り合った。ミスター・アカワが座るソファを取り巻く壁には、7枚の絵画が置かれていた。それらこそが、チャンの言う、「おもしろい物」だったのだ。それらを描いたのは、パリでチャンと同棲中の画家だった」
  アカワをとりまく7枚の絵。
ロベルトのモノログ「絵画は、どれも、顔の部分が影になっている、女性のヌードだった。ヌードの女性の腰には、タトゥーが描かれていた。ボクはハッとした。チャンのヌードを描いた絵画だ、と気付いたから。ボクらが部屋に入ってきた時、チャンは急いで服を着たが、その時ボクは、後ろ姿で、ジーンズに足を通すチャンの、腰のタトゥーを見逃さなかった。それは、小さなタトゥーだったが、変わった形だった。7枚のヌードの中で、その形がしっかりと描写されているものは、1枚だけだった」
  チャンは、一人、窓からの陽光を浴びながら、不思議なダンスを踊っている。
ロベルトのモノログ「だれもが息を呑むような、チャンのスタイルを見ると、ボクは、すこし、彼女とミスター・アカワの関係を疑ったが、薬指にリングを付けているミスター・アカワは、チャンと、たまたま、バー・レストランで知り合い、彼が絵画に興味がある事を話し、チャンは、彼女の恋人の絵をミスター・アカワに見せて、売り込んでいたところだったらしい。ミスター・アカワは、自分自身の審美眼を持っている男性だった」
  ミスター・アカワは、結婚指輪を撫でながら、チャンの部屋にあった、いくつかの絵を静かに見ている。
ロベルトのモノログ「彼は、特に何も言わなかったが、心の中では、いくつかの絵に対して、「好き・嫌い」を彼自身の審美眼で決めていたようだった」
  アカワがこちらに振り返る。
  ロベルトの視線がアカワに合う。
  チャンがダンスをやめる。
  クララが髪を整えている。
アカワ「ボクは、アートという表現が好きだ。アーティストに対して、批評家が言う批評には、ボクはほとんど関心がない。ボクは、ボク自身が心地よいと感じるアートを欲しいのさ。ここには、いい絵があると思うよ。ボクは、今、絵を買う程のお金を持ち合わせてないんだ。アメリカの友人に、いい絵があるって、連絡するよ。彼の名は、ドクター・トーマス・レブンワース・カールトン・ジュニア。彼は、新築した家に飾る絵を欲しがってた。ちょっと、ここの絵をビデオカメラで撮影していいかな?」
チャン「OK!」
  ミスター・アカワは、大きな黒いバッグから、大きなビデオカメラを出す。
ロベルトのモノログ「いまでも、ボクは、世の中に、そして他人の行動にとまどうが、アカワや、チャンは、なにか変わっていた。でも、ボクらのような、右も左も分からない子供を受け入れてくれていた、その心のやさしさに感謝している。ボクにとっては、アカワは理想的紳士であり、これからも彼みたいになれるか分からない。ただ、ありがとう、という気持ちを彼に感じる。彼は、おもしろい男だったし、だから、ボクはずっと、そのバッグに何が入っているのか、気になっていた。ボクは、映画が好きだったから、ミスター・アカワが取り出したカメラをじっと見ていた」
アカワ「きみ、撮影してみるかい?」
アカワはビデオカメラを手渡す。
  受け取るロベルト。
アカワ「そのボタンを押せば、テープが回り
 はじめる。ボクはね、キミたちの世代が、
 こういうモノを使って、新しいアートを作
 っていくと思ってる」
  ロベルトは、そこにあった絵を1つ1つ、撮影する。
 その間、ミスター・アカワは、彼の友人ドクター・トーマス・レブンワース・カールトン・ジュニアに宛てて、便箋に手紙を書く。
クララ「(ひそひそとロベルトに言う)あ
 の、チャンって人・・・、なんか普通じゃ
 ないよ。ミステリアスな感じ・・・。そう
 ね、わたし、彼女を、ミステリアス・チャ
 ンって呼ぶわ」
  ロベルトの微笑。(カメラを持ちながら。)  
ロベルトのモノログ「ボク、クララ、ミステ
 リアス・チャン、ミスター・アカワ、そし
  て、ドクター・カールトン・ジュニア。この5人のコネクションが、ある財宝さがしにつながっていった」



Dec.12(Mon) | Trackback(0) | Comment(0) | リコールFROM80s | Admin

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