リコールFROM80sプラン |
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| 31 バー・レストラン(内・昼) アジア女性(ミステリアス・チャン)がカウンターに腰掛け、タバコをくゆらし、ワインを飲んでいる。 ロベルトのモノログ「その6月、ある女性が、バー・レストランの常連客になっていた。6月のある日、シェフとの買い入れの後、ボクが車から積み荷を下ろし、持って店内に入ると、彼女は、そこに居た」 ミステリアス・チャンが、ロベルトに微笑む。 ロベルトのモノログ「彼女の目は、少し切れ長で、髪は黒々として、色白だった。アジアの女性の風貌だ。ギリシアの女性たちは美しい、と世界中で言われているのを知っていたが、周囲にはギリシア女性がほとんどだったからか、バー・レストランで見たアジアの女性の風貌にボクはたちまち引かれた」 ドギマギする、ロベルト。 荷物を持ちながら、ふらふらする。 チャン、再び、カウンターに向き直り、 持っていた小説を開く。 ロベルトのモノログ「ボクは彼女の詳細を知りたくなり、荷物を運びながら、彼女とバーテンダーの間で交わされる話に聞き耳を立てていた……」 バーテンダー「あんた、よく来るね、この頃。名前は?発音出来ないかもしれないけれど」 チャン「チャン・・・でいいわ」 こっそり、聞き耳を立てる、ロベルト。 ロベルトのモノログ「彼女の名はチャン。年齢は33才、推定年齢よ…と彼女が言ったように聞こえた」 カウンター越しに、バーテンダーとチャンが会話している。 バーテンダー「あんた、わけあり女ですね・・・」 チャン「わけの分からない女よ。幼少期の記憶もない。教えてくれる人も居なかった。だけど、それなりに素晴らしい人生を与えられてきた。一度結婚して、離婚後、ある画家とパリで同棲を始めた。今は長いバカンスを取りに来ているの、このクレタ島に」 彼女の容姿に引かれて、ずっと見ているロベルト。 ロベルトに英語で、話しかけてくるチャン。 チャン「ハウ・アー・ユー、リトル・シェフ」 ロベルト「・・・オーケー」 彼女は唐突に言う。 チャン「家族というのは芸術ではない…、そ れは、人生の通過点の美しい瞬間の1つ」 首をかしげるロベルト。 ロベルト「えっ?」 チャン、微笑む。 チャン「どうでもいいのよ」 そういって、彼女はグラスに残っていたワインを一気に飲む。 それから、シーフード・パスタをオーダーする。 チャンはロベルトの鼻の先を撫でる。 チャン「何才?」 ロベルト「もうすぐ15…」 チャン、再び、笑みを浮かべる。 チャン「分かりやすいのね…。今年85年で15才…。キミは、70年に生まれた」 チャンがオーダーしたシーフード・パスタが出てくる。 彼女はそれをつつく。
ロベルト「それ、美味しいでしょ?」 チャン、少し食べてから、言う。 チャン「食べる?」 ロベルト「いいの? ここのパスタ好きなんだ」 チャンは何も言わず立ち上がり、カウンターに代金を置いて、店を出ていく。 ロベルト、パスタを食べている。 ロベルトのモノログ「ボクは確かに、シーフード・パスタが好きだった。チャンはドアから出る前に、ボクをうつろな眼差し で見た」 チャンの、うつろな眼差し。 ロベルトのモノログ「ボクはドキッとした」 去っていくチャンを見送りながら、シェフは言う。 シェフ「バーには色んなタイプの客がくる。だけど、あの人は変わってる…。人間じゃないみたいに・・・」
32 白壁の家・ダイニング(夜) ロベルトの養父母がテーブルに着いている。 2人は、ワインをテイストしている。 ロベルトのモノログ「養父母は、ほとんどバーへ行くことがなかった。たまに、2人で、家のディナー・テーブルに腰掛け、向き合って、グラスにワインを注いで味わっていた」
33 白壁の家・ロベルトの部屋(夜) ベッドに寝て、天井をぼーっと見ているロベルト。 ロベルトの顔に、窓からの月明かり。 ロベルトのモノログ「ボクが養父母の白壁の家に来る前、そこに彼らの実娘が住んでいたらしい。結婚後、彼女はマニラで生活している。ボクは、あまり規制を受けずに養父母に育てられ、時々、ポケットマネーをもらった」 34 バー・レストラン(おもて・朝) おもてにトラックが停めてある。 ロベルトが、自転車で、レストランに来る。 ロベルト、自転車にチェーンをかけ、レストラン内に入る。 ロベルトのモノログ「ボクがバー・レストランを手伝うようになったのは、海の香りのする市場の雰囲気が好きだったから……」 ロベルト、シェフと共に、外に出てきて、トラックに乗り込む。 トラック発進。
35 トラック(内・朝) シェフが運転して、ロベルトが助手席に乗っている。 窓から、海岸線が見える。
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Dec.12(Mon) | Trackback(0) | Comment(0) | リコールFROM80s | Admin
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