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(ボディサバつづき)

--------------------------------------------------------------(46)
マグレガー「いや、そうでもない・・・。
 そもそも、実行犯は4人居る、と我々は考えて
いる・・・。4つの事件が全く違う様相だった。
その、宗教用語をのぞいては・・・」
  そこへ、マダム・ボが入ってくる。
マダム・ボ「2人とも、元気してたー?
 ハナシは弾んでる? 今日のファースト・ドリンク
 は、あたしの奢りにしとくわ!」
  マダム・ボは、2人のソファの前のテーブルに
  レッド・ワインのグラスを3つ置く。
マダム・ボ「あたしも参加していいかしら?」
  マダム・ボ、マグレガーの顔を、意味ありげに
  見つめる。
マグレガー「私は、イアンの事情聴取をしている。
 イアンしだいだ。それに、私はかれを犯人だと
思ってはいないしな。私はかまわん」
イアン「まあ、うれしい。マグレガー刑事、知ってる
ことはなんでも言うよ。マダムも、ここに居て
いいよ。ぼくは気にしないから!」
マグレガー「まあ、じつは、もう、ほとんど聞くこと
 はないんだよ。ん?」
------------------------------------------------------------(47)
イアン「何? どした?」
  マグレガー、イアンの腕の、腕時計をみて、
マグレガー「君、腕時計が趣味かい?」
イアン「うん、分かる?」
  イアンの腕に赤い腕時計。
マグレガー「君の腕時計と同じものを私も持ってるよ。
 今日は、してこなかったがな。いい品だ」
マダム・ボ、マグレガーのとなりに腰をおろし、
マダム・ボ「腕時計のハナシなんか、ちっとも楽しく
 ないわ! べつのハナシにして。 マグレガーさん、
 あなた、奥さんいるの? うふふふふ」
  マダム・ボ、そう言いながら、マグレガーの太もも
  に手を置く。
マグレガー「ワイフは出て行った」
マダム・ボ「じゃ、さびしいでしょ・・・?」
イアン「なんか、今日は、あなたの事情聴取みたいです
 ね、ミスター・マグレガー」
  マダム・ボ、マグレガーの目をじっと見つめ、
マダム・ボ「あたしも、結婚はしてないわ」
イアン「ああ、マダム、ひょっとして、
 マグレガーさんのこと、気に入った?
--------------------------------------------------------(48)
 ぼくは、じゃまだね。出て行くよ」
  イアン、去る。
マグレガー「お、おい」
マダム・ボ「いいじゃない、2人になれたんだし」
マグレガー「むむむ・・・」
マダム・ボ「今夜、私のアパートで飲みなおさない?」
マグレガー「・・・・」
マダム・ボ「家に帰っても、一人でしょ?」
マグレガー「そーだな・・・、okだよ」

48 タクシー内(夜)
  マダム・ボとマグレガーが後部座席に乗っている。

49 マダム・ボのアパート前(外・夜)
  タクシー停車。
  マダム・ボとマグレガーが降りる。
マダム・ボ「ここよ」
マグレガー「今日はじめて会ったばかりの女性の家に
あがっていいのかな・・・」
マダム・ボ「おたがい、子供じゃないでしょ。何
 言ってるの」
----------------------------------------------------------(49)
  アパートに入ってゆく2人。

50 アパート内(夜)
  ライトがつき、2人が入る。
  マダム・ボ、冷蔵庫を開け、ビールを出す。
マダム・ボ「ハイネケンでいい?」
マグレガー「なんでも」
  マグレガー、ビールを飲む。
マダム・ボ「シャワーあびるわ」
マグレガー「どうぞ」
  マグレガー、TVをつける。
  アニメ放送。
  しばし、見ているマグレガー。
音「ガチャ」(ドアの開く音)
  振り返るマグレガー。
  シャワー室から全裸で出てくるマダム・ボ。
  びっくりして、飲んでいたビールを吹き出す
  マグレガー。
マダム・ボ「なに、子供みたいによごしてるのよ」
  マダム・ボ、やさしく言う。
--------------------------------------------------------------(50)
  そして、マグレガーのそばに駆け寄る。
  マグレガーにいきなり、キス。
  ディープ・キスになる。
  しばらくして、マダム・ボ、唇をはずす。
マダム・ボ「私は、ボディサバ・・・」
マグレガー「え??」
マダム・ボ「私はボディサバ! あなたを至福の
 世界へつれていく・・・」
  マグレガーの目の前の、全裸のマダム・ボの
  肌が、金色に変化する。
  そして、マダム・ボ、宙に浮く。
  マダム・ボの背中から、無数の手が生えてくる。
マグレガー「うつくしい・・・・」
マダム・ボ「うふふふふふ・・・・」
  マダム・ボの無数の手の中に包まれるマグレガー。




51 警察署(内・朝)
  マグレガーが、ニコニコ顔で、出勤し、
  署内廊下を歩いている。



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(ボディサバつづき)

--------------------------------------------------------------------------(41)
イアン「ふふふ・・・、警官の過去ですね・・・」
マグレガー「はじめは、警官になる気はなかった。
 FBIが、オリンピックでの私を見て、引き
 抜きに来たのさ。射撃種目の金メダリストに
 なっちゃったんだよ・・・」
イアン「すごいですね。今はどうしてSFPDに?」
マグレガー「私の射撃の才能は天分だった。
 ほとんど努力せずに、金メダルだ」
イアン「へえ」
マグラガー「だが、女でしくじった。独身だった
からな。あるFBIの作戦に参加してたんだが、
酒場で知り合った女に、FBI内部情報を漏らし
ちまった。その女が、実はある麻薬密輸組織が
差し向けた女スパイだった」
イアン「で?」
マグレガー「作戦は大失敗。私は、FBIから
 追放。なんとか、SFPDに再就職した。
 それからは、おれも頑張ったさ。天分に頼れる
のは銃さばきだけ。犯罪捜査を基本から勉強
しなおした。7年後には、市長から功労賞も
もらった。だが・・・」
----------------------------------------------------------(42)
イアン「だが?」
マグレガー「妻には去られる始末さ。仕事で
 頭がいっぱいだったんだ・・・」
イアン「じゃ、いまは・・・」
マグレガー「1人ぐらしだ・・・」
  話しながら、2人は夜道を歩いていく。
  
45 ボディサバ・カフェ(外観・夜)
  「ボディサバ・カフェ」の看板。
イアン「ここです」
マグレガー「ボディサバ・・・、また、
ボディサバか・・・」
イアン「ボディサバは、古代インドでの、
 人間を越えた超越的存在です」
マグレガー「神のようなものか・・・?」
イアン「まあ、そんなところでしょう。
 中に入りましょう。しゃれたバーですよ」
  
46 ボディサバ・カフェ(室内・夜)
  カフェ内には、インド風のアートが
  たくさんある。
--------------------------------------------------------(43)
  2人がカフェ内へ入ってくる。
イアン「あれですよ。あれがボディサバ!」
  壁にかかった大きな絵を指すイアン。
  絵には、雲に乗って、空に浮かんでいる、
  金色の肌の女性が描かれている。
マグレガー「異国情緒あふれる絵だな・・・」
  マグレガー、にやり。
イアン「この街には世界から人が集まってる
 んです。この街には、いまだヒッピーも多い。
 ヒッピーにはなぜか、インドのカルチャーが
 うけるんです」
女の声「あら! イアンじゃない!」
  2人の方へ歩いてくる、セクシー・ドレス
  の女。
イアン「マダム・ボディサバ・・・」
マグレガー「マダム・ボディサバ?」
イアン「そうです。ここのオーナー経営者の
 マダム・ボディサバです」
マグレガー「はじめまして」
マダム・ボディサバ「こちらこそ、はじめまして」
-------------------------------------------------------------------(44)
マダム・ボ(略称)「イアン、こちらの方、あなたの
 お友達?」
イアン「ちがいますよ。この人、実は刑事なんです」
マダム・ボ「えっ?」
イアン「このごろ、SFベイエリアで、ヘンな殺人事件
 が起きてるでしょ、・・・ほら、時々、NEWSで
 見ない、マダム?」
マダム「ああ、そういえば・・・」
イアン「で、この人、ぼくのことを疑ってるみたい
 なの」
マグレガー「いや、ただ、聞きたいことがある
 だけさ・・・」
イアン「でさあ、話するなら、この店での方が
 楽しいじゃん? で、つれてきたんだあ」
マダム「ふうん。じゃ、奥の個室に入ったら?
 話するんなら、いい場所よ」

47 個室
マグレガーとイアンが入ってくる。
ソファに2人座り込む。
-------------------------------------------------------------(45)
マグレガー「さっそくだけど。イアン、君は、
 ボディサバ・コミューンに所属してるね?」
イアン「ええ」
マグレガー「例のSFベイエリアの連続異常殺人の
 件だが、犯人が、日本仏教に使われる特殊用語
 「悪人正機」などを犯行現場の壁に書き残して
いることから、ボディサバ・コミューンを当た
ってみた。あそこは、日本仏教のスタイルを
一部とりいれた、共同体らしいからだ」
イアン「そうですか」
マグレガー「悪いが、いろいろ調べさせてもらった。
 君は、コミューンにこのところ帰ってない。
 その点が、われわれが、君に目を付けた理由だ。
 なぜだ?」
イアン「なぜって、・・・宗教の自由は憲法に書か
れてます。ボディサバ・コミューンに、私は合わ
なかったんです」
マグレガー「それだけか」
イアン「それだけです。ぼくは、そんなに疑わし
いですか?」



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(ボディサバつづき)

-------------------------------------------------(36)
マクレガー「もういい。今日のところは引き上げだ」
しばらく思い悩んだ様子で、タカギたたずむ。
タカギ「そうか、メディケイションを受けているのか・・」
マクレガー「おい、行くぞ」

42 オフィス(昼)
マクレガーが社内の責任者に質問
している。となりにマグレガー。
男「困ったな。イアン君の住所を教えてくれなんて。
彼は、ここにはもう通ってないんだ。
彼なにやったの?」
マクレガー「ここのところ、市内で連続して
起こっている殺人事件について、なにか情報
を提供してもらえるかとおもいましてね」
男「やだー! 彼が犯人だったの?
全然そんな風には見えないのに。ほんとよ刑事さん。
すっごいまじめで、おとなしくて 、・・・うふ、
いい男よーん」
タカギに流し目を送る。
タカギ、焦り、向こうを向く。
----------------------------------------------(37)
マクレガー「では彼の現在の住所を教えてくれますか?」
男(タカギを指さし)「彼が頼んだらね・・・うふ」
男タカギの背中に声をかける。
タカギに近づき 、
マクレガー「どうやら君のことを気に入ったらしい」
タカギ「・・・・」

43 テンダーロイン地区の安アパートの外(昼)
パーキングに車を止めて、
タカギとマクレガーが、
イアンの帰りを待っている。
タカギ、コーヒー片手に、・・・
マクレガー、せわしなくタバコをふかし続ける。
いらついたように、
タカギ「今日は帰りましょう。もうこないですよ」
深くタバコを吸い込み
マクレガー「まあ待て。イアンがここに帰ってこないとしたら、
どこにいくんだ。辛抱が大切だ」
タカギ「俺はじっとしてたら頭が狂いそうになってくる」
マクレガー「どうしたんだ。落ち着け」
--------------------------------------(38)
深く助手席に沈みこみタカギ黙る。
しばらく沈黙が続く。
タカギ「あの娘見ましたよね」
おきていたのか、というかんじで、
マクレガー「誰のことだ?」
タカギ「あのコミュミティーで俺達に話しかけた女の子」
マクレガー「ああ。」
タカギ「あの娘、メディケイションを受けているとか、
変なことを口走っていたけど・・・。
俺には、あの目に見覚えがあるんです」
マクレガー「・・・」
タカギ「俺のガールフレンドも精神に問題があって
メディケイションを受けていた。
いつも世界が狂っているなんて口走っていて・・・」
マクレガー「・・・」
タカギ「俺は彼女を救ってやれなかった」
マクレガー「・・・」
タカギ「あんな娘にまた出会うなんて、世界は狂ってる!」
マクレガー「例え、世界が狂っていようとも、俺達は俺達の
やるべきことやるだけだ」
---------------------------------------(39)
タカギ「ふん。そうやって生き続けてなにが残るというんです。
結局年老いて、醜くなって死ぬだけだ」
マクレガー「君は、つかれているよ。おれも疲れている時
そんな考えになることがある。しかし、その考えを、
振り切らなければ。今日は、もう帰りなさい」
  タカギ、ドアから出て去る。
  しばしの時間。
長身の白人が玄関に手をかけている。
車からマクレガー出る。
  長身の白人の男がまさに玄関に手を掛けようとする。
マクレガー「イアンさんですね?」
  振り向くイアン。
マクレガー「SFPDのものです。 ちょっとお尋ねしたい
ことがあるのですが、お時間いただけないでしょうか?」
  表情を変えずに、
イアン「・・・警察の方が私になんの御用でしょう?」
マクレガー「 市内で連続して起こっている殺人事件に
関して、お聞かせ願いたいことがあるのですが」
  同様に表情を変えずに
イアン「・・警察の方の手助けになることは何も話せない
と思うのですが」
----------------------------------------------------------------------------------(40)
マクレガー「私はボディサバコミューンの紹介できたんです」
  イアンの表情がわずかに変わる
マクレガー「これは正式な捜査ではありません。ただ、この件に
関してあなたから貴重な話が聞けるのではないかとおもいましてね」
  表情を変えずにイアン、しばらく黙り込み、
イアン「・・・おいしい酒を飲みたくありませんか?」
マクレガー「は?」
  ふっと笑い、
イアン「お互い疲れているようだ。私はいい場所を知って
いるんです。刑事さん、どうです一杯?」
  マクレガーしばらく黙り無表情でイアンを見返す
  透き通るようなイアンの目
マクレガー「・・いいでしょう。」
  
44 チャイナ・タウン近くのネオン街(夜)
  夜のネオンがキラキラ・・・。
イアン「どうです、刑事さん? この辺の雰囲気は?」
マグレガー「若いころを思い出すよ。そうだな、
 20代の初めごろかな・・・、遠い記憶の彼方だ。
 刑事になる前さ。あの頃は、オリンピック選手で、
 大学も奨学金をくれた。パートの稼ぎは、この辺
 での遊び代に消えたさ」



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(ボディサバつづき)

_________________________(31)
タカギ「日本経済のバブル期に、多くの日系企業が
サンフランシスコに入り込んでました。同時に、
日本仏教も入り込んだんですが、
バブル崩壊後、多くの日系企業が撤退し、
実際は仏教ともいえない、スタイルのみの、
へんてこな思想を置き土産にしてしまいました。
実際にさっそくそのコミュニティに向かいましょう」

37 ゴールデン・ゲート・ブリッジ(外観・昼)
タカギたちの車がブリッジを越え、マリン・カウンティへ。

38 小道(外)
 林を抜け、タカギとマクレガーを乗せた車が
坂を下っていく。

39 ヒッピー・コミュニティー(入り口・昼)
  「ボディサバ・コミューン」大看板。
  (アルファベット: Bodhisattva Commune)
  2人、車から出る。
  中年女性が2人に近づく。
__________________________(32)
女性「なにか御用?」
マグレガ-「ええ、ちょっと」
中年の女性の案内を受けコミュニティーの紹介を受ける
タカギとマクレガー。

40 コミュニティのフィールド(外・昼)
おもにタカギが女性と会話し、マクレガーはタバコを
吸いながらあとに続く。
海水パンツ1枚のみで、ランニングしている
男たち。
女性「このように当コミュニティーのメンバーは昼夜、
規則ただしい生活をおくっています。
毎朝5時に起床して、ボディサバの間での
座禅から一日がスタートします」
せわしなくタバコをスパスパ吸っているマクレガー
を目ざとくにらみ、
女性「当コミュニティーは、さまざまな依存
症にかかった人々が立ち直るのを支援して
いるんですの」
女性の方に振り向き
マクレガー「コミュニティーのメンバーリスト
をわたしてほしい」
_____________________(33)
驚いた顔で、
女性「個人情報は一切、提供できません」
マクレガー「今、市で連続して起こっている
異常殺人事件にここのメンバーが関わって
いるかもしれないんです」
女性「まあ、そんなことは一切ございません!」
マクレガー「これが殺人事件が起きた日時です。
鑑定から、割り出しました。ここのコミュニティー
メンバーのアリバイをはっきりさせる必要がある」

41 コミュニティーのミーティングルーム(夕)
タカギとマクレガーがイスに座っている。
タカギ「どうですかね? 彼女キチンとメンバーの
アリバイを調べてくれていますかね?」
マクレガー「はっきりとはいえないが、彼女は
この件には関係ないだろう。ただコミュニティー
にたいしてよっぽど執着しているらしく、
おいそれとはメンバーの情報はわたしてくれ
そうもないな。かといって令状が取れるほどの
物証もないし・・・」
______________________(34)
なにかに気がついたようにマクレガーが振り向く、
それにつられてタカギも振り向く。
近くのドアの隙間から髪を振りみだした
若い女性がのぞいている。
タカギ「誰だ?!」
女性「みんな死んで救われる・・・、ボディサバが
救ってくれる」
タカギ「何を言ってるんだ!?」
女性「私たちは皆悪人。みんな、みんな死ぬの」
タカギ「待て!」
ケラケラと笑いながら女性は走り去る。
マクレガーの方を振り向き、
タカギ「ああ、こえぇ。いったいなんだありゃ?!」
正面ドアが開き中年女性が戻る。
女性「お待たせしました。全メンバー大まかなスケジュールを
チェックしてみましたけど、問題は全くありませんでした。
ただ、・・・」
マクレガー「ただ?」
女性「一人の方がここ2週間ほど、この施設の部屋
にもどってないんです」
--------------------------------------------(35)
マクレガー「何」
自分の言ったことを打ち消すように、
女性「凄く良い方で、絶対こんな事件には関わっていません!」
マクレガー「われわれはいかなる情報も知る必要がある。
いいですか、これは連続殺人事件なんです。ほうっておくと
またあらたな犠牲者が増える可能性があるんですよ。」
しばらく悩んだようすで、
女性「分かりました・・・。彼はコミュニティーから
職場に通勤していたんです。彼の職場を当たってみて
はどうでしょう。」
マクレガー「ありがとうございます」
タカギ「あの、さっき髪を振り乱した女性を見たん
ですけど」
女性「ローラさんね。彼女ちょっと精神面に問題があって・・・
でもここに来て良くなってきたのよ。
ここでは常にメディケイションもおこなっていますし。
ただあの件以来、おかしなことを口走るようになって」
タカギ「あの件?」
はっと我に返ったように、
女性「用が済んだらお引取りください。我々も忙しいですから」



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(ボディサバつづき)

-------------------------------------------(26)
32 インド料理店(室内・夜)
  店主が振り向く。
  タカギがテーブルに座る。
  テーブルの上のスタンド・メニューを、ちらと
  見て、
タカギ「チキンのカレーとナンをお願い」
店主「かしこまりました」
  テーブルに座りながら、店内の壁を見回すタカギ。
  壁には、インド古代宗教の多神教の神々、像の顔の神など、
そして、仏陀の座像やマンダラの絵のポスターが
貼られている。
タカギ「はあ・・・・」
店主(料理しながら)「めずらしいかい?」
タカギ「そうですね・・・、でも、この街にはインド系の
移民も多いですから・・・、僕は警官になる前にアートの
勉強してたんです。そっちには才能なかったんですけど。
だけど、クリエイティブな絵だなあ・・・って思って」
店主、カレーを持ってくる。
店主「はいよ」
  タカギ、バクバク食べる。
----------------------------------------------------(27)
33 Golden Gate Park側の道(夜)
  タカギが1人で帰路を急ぐ。
  あたりは人の気配がない。
  タカギ、何度か、くしゃみする。
タカギ「疲れかな・・・、ちょっと風邪ひいたみたいな・・・」
  タカギの頭に、赤いレーザー光が照準を捉える。
  タカギ、気づかない。
  タカギ、くしゃみする。
タカギ「ハアクシュ!!」
  大きいくしゃみで、思い切り前かがみに。
銃声「ドキュー!」
  前かがみになったタカギを越えて、タカギの後ろに
  あった、電柱に弾が当たる。火花ちる。
  タカギ、後ろの電柱に振り向き、もう一度、前を見る。
  タカギのひたいに、また赤レーザー光が。
  タカギ、とっさに、側の道ばたに駐車してあった車
  に身をかくす。

34 車のかげ(外・夜)
銃声「ドキュー!」
  弾が、車にあたり、火花が。
  車のかげで、うろたえるタカギ。
タカギ「くそっ!! だれだ!!」
----------------------------------------------(28)
  車の陰から出ようとすると、
銃声「ドキュー」
  タカギ、あわてて、車のかげにもどる。
  そのとき、ころんで顔を地面で打つ。
タカギ「いってー」
  闇の中で、コートから銃を出すタカギ。  
銃で何発か発砲し、応戦するタカギ。
  暗闇に銃声が響き渡る。
  車の陰に隠れながら、銃声のする方を、
  うかがうタカギ。
  タカギの肩に、誰かがポンと手を置く。
  びくっとして振り返るタカギ。
  鼻血が垂れているタカギ。
  肩をたたいたのは、マグレガー。
マグレガー「なんて顔だ。前はケチャップだったが。
今回は深刻そうだ」
タカギ「顔を地面で打ちました。ギャグはやめてくだ
さい。ほんとに深刻な状況です」
---------------------------------------------------(29)
マグレガー「そこの角で銃声を聞いてな。来たんだよ。
ジョン、君は命拾いをしたぞ」
タカギ「なにがですか」
マグレガー「私が来たからだよ」
(さらに)銃声「ドキュー」
タカギとマグレガーの側で火花散る。
タカギ「つきあってられません。やばすぎです」
  タカギ、さらに銃声の方向に何発か打つ。
  相手はさらに撃ってくる。火花散る。
マグレガー「君の銃の腕前は、はっきり言って最悪」
  マグレガー、コートから自分の銃を出す。
  マグレガー、一瞬、車のかげから身を外へ出すと、
  一発打つ。
とおくのしげみで叫び声
声「アアア!!!」
  あぜんとするタカギ。
タカギ「そうでしたね・・・、あなたはオリンピック
 射撃・合衆国代表だった・・・」
マグレガー「・・・だが、やはり、腕が落ちた。
 やつを逃がした。弾は、やつのどこかに当たったが、
 やつの動きを止められなかった」
-----------------------------------------------(30)
35 ストリート(夜)
  タカギとマグレガーが、車の陰を出て、
  銃声がしていた、しげみに近づく。
  しげみの辺りを見回すタカギ。
タカギ「ここに血が落ちてます」
マグレガー「やはり逃げられたか・・・」
タカギ「マグレガーさん、あんたを、すこし尊敬しましたよ。
 ただの中年じゃなかった」  

36 車の中(昼)
助手席に座るタカギ
ハンドルを握るマクレガー
タカギ「例の浄土真宗の寺についてですけど、どうやらサン
フランシスコにはないようです。」
マクレガー「むう、それは困ったな。」
目を輝かせながら、
タカギ「でもネットで、サンフランシスコ・ベイエリアの
日本仏教、・・・と検索したら、1つ、あやしい所
がありました。マリンカウンティーの郊外のほうに、
いまどきのヒッピーの集落があるんです。
それが、日本仏教の思想をベースに、自給自足の
コミュニティーを形成してるんですよ」
マクレガー「ほう!」



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(ボディサバつづき)

----------------------------------------------------------------(21)
マクレガー、マイクの側によってくる。
マクレガー「どういうつもりだ? マイク。
あんな喧嘩まがいの事をやりやがって」
マイク、無視して着替える。
ロッカーを軽く叩き、
マクレガー「おい!聞いているのか、マイク?!」
マイク、さっさと通り過ぎていく。

27 ロッカールームの出口
  マイク、震える右手を見つめ、
マイク「・・タカギの奴のあの身体からどっから
 あんな力を・・・」

28 Golden Gate Park 石畳の橋の上(夕方)
 メガネをかけたビジネスマンがうつむき
ながら、タバコを吸っている。
しばらくして、
声「ゴザンゼ!」
ビジネスマン、振り向く。
--------------------------------------------------------(22)
黒人の大男が近づいてくる。
大男「どうだ調子は?」
タバコを地面に落とし、吸殻を足で踏みながら、
ビジネスマン(ゴザンゼ)「まあまあ、ってとこかな。
そっちはどうだ、コンゴウ」
大男(コンゴウ)「いつものバウンサー業さ。全く暇だよ。
近頃のバーやクラブときたら、気取ったカップルどもで
あふれ返っていて、実にお上品なものだよ。トラブルを
起すほどの金玉がついた野郎なんか、とんとみかけねえ」
ゴザンゼ「ふふ。例の衝動ってやつが、うずいているようだな」
コンゴウ「お前こそ、ここ何日も眠ってねえ、って面だぜ。」
地面に5本ほどの吸殻。
ゴザンゼ、地面に目を落として、にやっと笑う。
ちょっと狼狽して、
ゴザンゼ「なにを言ってるんだ!俺は今の人生に満足している。
愛する妻もいるし、仕事も順調にいっている。」
ニヤニヤしながら、
コンゴウ「まずは、こころを開いて、自分をさらけ出せ。
あのひとも言っていたじゃねえか。まあいい。
さっそく次の天誅リストがグンダリからきたぜ。」
---------------------------------------------------------(23)
  ゴザンゼ、目を輝かせるもそっけなさを装う。
ゴザンゼ「どれ見せてくれ」
プリントアウトを受け取り、
ゴザンゼ「こんなにか!」
ゴザンゼ、うれしそうに微笑む。
それを見て、にやりとし、
コンゴウ「待ちわびた、眠れる日々の到来ってか。
一本もらっていいか?」
ゴザンゼからタバコを一本受け取り、火をつけ
気持ちよさそうにくゆらせるコンゴウ。
コンゴウ「2人のデカが俺らの事件の調査を開始した」
ゴザンゼ「ふん、無駄だ。下界の連中には俺たち、神のつかいの
やることには手を出せるはずがない」
にやりと笑いながら、
ゴザンゼ「第一、証拠なんてあるはずがない!」
コンゴウ「ところがどっこい日本から来たデカが、
悪人正機と天誅の意味を、SFPDのデカに教えた。
足がつくかもだぜ」
---------------------------------------------------(24)
ゴザンゼ「俺たちに辿りつけはしないさ」
コンゴウ「まあ、念には念を入れないとな」
ゴザンゼ「ところで、ダイトクは?」
いらついた表情をうかべながら、
コンゴウ「あのガキ、あの人のところに毎日、入り浸ってやがる」
ゴザンゼ「だれも、あの人の魅力に勝てないさ、
 きみもそうなんだろう?」

29 SFPDポリス・ステーション(室内・夜)
  机にうつぶせになっていた、タカギが、がばっと
  顔をあげ、目覚める。
タカギ「ううああ!!」
  タカギが居眠りする前に見ていた殺人事件の
  資料の上に、よだれが垂れている。
  となりのデスクで、パソコン作業しているマグレガー。
マグレガー「ジョン、おめざめかい? ふふふ」
タカギ「すみません。居眠りしてました・・・、
 悪い夢で目が覚めました・・・」
------------------------------------------------------(25)
30 SFPDポリス・ステーション(外観・夜)
  ポリス・ステーションの上の空に流れ星が流れる。
マグレガー(声のみ)「ジョン、君はつかれてるよ。
 ベイエリアに来てすぐ、殺人事件のはなしだ・・・、
ムリもない。今夜はもう、かえりなさい」
ジョン(声のみ)「そうします・・・」
マグレガー(声のみ)「落ち込むな、ジョン。あたりまえの
 事なんだ。ジェット・ラグを治す時間さえ、
与えなかった。ふつうなら、もう倒れてるよ。
今夜は、よく寝ろ」
ジョン(声のみ)「あしたには回復します・・・
さよなら」
マグレガー(声のみ)「おやすみ」
  ステーション前で、猫がゴミ箱をあさっている。
  ステーションの建物から出てくるタカギ。

31 インド料理店(外観・夜)
  タカギ、店の前で立ち止まる。
タカギ「食ってくか」
  店に入るタカギ。



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(ボディサバつづき)


----------------------------------------------------------(16)
マイク「マイクだ。よろしく。君が東京から
 来たことは聞いていた」
マグレガ-「だが、マイク、なんで、今ごろ、
 ここに居るんだ?今日は休暇だろ」
マイク「わすれものを取りにきてた」
マグレガー「そうか」
マイク「じゃあ、また勤務の時に会おう」
  マイク、去る。

25 警察署内のジム(翌日・昼)
リング、サンドバック、ダンベル、ワークアウト用の
器具等が完備されている。
軽装の数人の署員がワークアウト、縄跳びなどをしている。
そこへTシャツにジャージの下、姿のタカギが入ってくる。
自分の居場所を確保し、ストレッチをし始めるタカギ。
パンチングボールに向かう。
タカギ、軽やかに、リズミカルにパンチングボールを打つ。
他の署員達「ほう!」
タカギの動きに見とれている。
サンドバッグに向かうタカギ。
タカギ、軽く打ち込むも、リズミカルにパンチのコンビネーションを
サンドバックに叩き込む。
-------------------------------------------------------------------------------------(17)
ワークアウトの動きを止め、その動きに見とれる署員達。
署員A「あの、小さいの凄い動きしやがる」
署員B「ありゃ、素人じゃなねえな」
入り口付近でマイクが立っている。
マイク、腕組みしながら、タカギを見つめる。
タカギ、サンドバックの前でステップを踏み変えながら、
強いパンチを叩き込む。
マイク、Yシャツを緩めながら、タカギに近づいていく。
マイク「よおタカギ。まるでフリオセサ-ルチャべスみたいだな」
タカギ、動きを止め、肩で息をする。
タカギ「・・俺の理想のスタイルはメキシカンボクサーなんだ」
マイク「日本の方では大した成績残したらしいじゃないか?
マクレガーから聞いているぜ」
タカギ「プロ向きって言われていましたよ。あなた、たしかマイクさん?」
マイク、グラブをはめながら、
マイク「俺もアマチュアじゃあ、ちったあ鳴らしたもんなんだよ・・
リングへあがりな。遊んでやるよ」
側で聞いた署員達。
署員A「おいマイク、そいつとお前じゃ体格差あるよ。怪我さしちまう」
タカギを振り向き、
マイク「怖いならやめてもいいんだぜ、キッド?」
-------------------------------------------------------------------------------------(18)
タカギ、クラブを着けはじめ、
タカギ「・・後悔するぜマイク。俺のボクシングはパウンドフォーパウンドなんだ」
署員達「ヒュー! 言いやがるぜタカギ!!」
舌打ちし、
マイク「明日は出勤できないぜ、タカギ?」
リングで向かい会う二人。
タカギ、ステップを踏みながらサークリングする。
マイク、じりじりと詰める。
タカギ、170前半、マイク180センチちょい、といった
ところか。あきらかに体格差がある。
タカギ、距離を置くも、マイクが長いジャブを伸ばす。
タカギ、舌打ちし、距離を詰めて、ジャブ出す。それがマイクの顔を弾く。
署員達「おお!」
マイク「くそ!」
  タカギ、ステップインとアウトを繰り返しながらマイクの顔にジャブを当て続ける。
マイク「くそっ!くそっ!」
  遠巻きに見守る署員達。
署員B「あいつ凄えぜ! マイクだって署のボクシング大会じゃいつも
優勝してるっていうのに、まるでものが違う」
署員C「見ろよ。あの動き、まるでブルースリーだ!」
マイク「くそ!生意気な動きしやがって!」
---------------------------------------------------------------------------------(19)
マイク、タカギに身体を預け、クリンチする。
タカギ、マイクの身体に覆いかぶされて、
手が出ない。
マイクそこからボディをドンドン打つ。
署員達「あれはやべぇ!」
そこに欠伸をしながらマクレガーが入って
くる。
マクレガー「ふぁ~やけにさわがしいな・・・、
ん、・・・あれはジョンとマイクじゃないか」
署員C「そうよ、本番真っ最中てとこさ」
署員B「なぜか知らんが、マイクのやつ、タカギに
絡み始めて・・」
マクレガー「・・・」
  マイク、タカギをつかみながら、ボディ、
顔面へとパンチを打ち続ける。
マイク「言っただろう! 明日は出勤できない
ってな!」
タカギ、一気にマイクを振りほどく。
マイク「・・! この野郎! おとなしくしないか!」
  マイク、もう一度タカギに覆いかぶさり、タカギのTシャツを掴む。
  するとタカギが、もの凄いスピードで身体をひねる。
-------------------------------------------------------------------------(20)
マイク「うわっ!」
  吹っ飛ばされるマイク。
その手にはタカギのTシャツの切れ端。
Tシャツが破れ、上半身剥き出しのタカギ。
彫刻の様に鍛えられた後背筋。
署員C「見ろよ、あの背中。どうやって鍛えたら
あんなになるんだ?」
マイクを無表情で見下ろすタカギ。
マイク、立ち上がり、
マイク「まだ終わってないぞ、タカギ!」
マイク、タカギに向かう。
タカギ、構える。
突然ゴングが鳴る。
タカギとマイクが振り向く。
ゴングの前に立つマクレガー。
マクレガー「いい加減しろ二人とも!」

26 ロッカールーム
着替えているマイク。



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(ボディサバつづき)


-------------------------------------------(11)
20 殺人被害者写真#2
  スーツを着た白人が数箇所の刀傷とともに、
  血まみれで自室に横たわっている。

21 殺人被害者写真#3
  年配の神父姿の男が不自然な体勢で、
  横たわっている。目は見開いているものの、
  その口からは、だらしなく舌がヨダレともに、
  のぞいている。

22 殺人被害者写真#4
  アジア系の太った男の射殺死体。

23 マグレガーのデスク
マクレガー「1枚目はダウンタウンの一角で毒殺された
 麻薬の売人。2枚目はサンフランシスコの有力政治家だ。
 自室で斬殺された。3枚目は市内の教会の神父。素手で
 絞殺だ。抵抗したようだが、とんでもない怪力で首の骨を
 砕かれている。最後のやつはチャイナタウンのごみ捨て場
 にあった射殺体だ。明らかに、同一人物による犯行では
 ない」
---------------------------------------------(12)
タカギ「しかし、いつも同じメッセージを残すことを忘れない」
マクレガー「そうだ。グループ犯による、何らかの政治的
 意図があっての犯行なのだろうか・・・?」
タカギ「たしかに、天誅というのは、日本のサムライ時代の
 終焉期である明治維新の頃、シンセングミというテロリスト
 グループが要人暗殺の際に用いた合言葉です。
 しかし、悪人正機とは全く関連性がないはず」
マクレガー「その悪人正機という言葉について、
 もう一度、話してくれないか?」
タカギ「僕もハイスクール時代にちょっとかじった程度です。
 鎌倉時代当時の日本には末法思想というのが、はやって
 いました。どういうことかいうと・・・、あと200年
 でこの世の終わりが来るから、それに向かって一生懸命
 生きなさい、とかいう感じの思想です」
マクレガー「ふむ、ふむ、・・・。私の両親は、私を
 ピューリタンの教会に連れて行ったが、私がそこで
 聞いたハナシでも、初代キリスト教会では、キリストの
 昇天後、すぐに世界が終わり、キリストが雲に乗って再臨
 する、という考えがあったらしい」
-------------------------------------------------------------------------------(13)
タカギ「人間は勝手に話を作ってしまうんですね・・・。
 鎌倉時代の話に戻りますが、・・・ちょうど、そういった
 末法思想の世相を背景に、3つの新しい仏教宗派が誕生
 したんですよ。そのうちの一つが浄土真宗。開祖が親鸞。
 この親鸞が唱えたのが、 ” 悪人正機 ” 
・・・すなわち、悪人こそが、この世で救われるべき存在である、
 と」
マクレガー「ふふふ・・・、悪人こそが救われるべき・・・か。
 キリストも罪人を救うために、この世に来た、と言った」
タカギ「・・・しかし、私たちは、宗教家ではありません。
議論したところで、犯人の心理は分からないでしょう。
ただ、このタイプの殺人者は、宗教の教理の好きな
ところだけを取って、殺人を正当化する独善家です。
私たちに出来ることは、手がかりをつなぎ合わせて逮捕、
・・・そして刑務所にぶち込めばいいんです」
マグレガー「シンプルだが、見事なモチベーションだ。
私たちは弁護士ではない。警官は、そのくらいシンプル
でいい。しかし、悪人正機の事は、すこし頭においとくよ」
タカギ、しばらく黙りこむ。
------------------------------------------------(14)
マクレガー「現在の情報だけでは、情報不足だ・・・、
しかし君が来てくれて、本当によかった。君の知識のおかげで、
とりあえず、いくらか、関係がありそうな組織をしぼれる」
一瞬唖然として、テレを隠すように顔を逸らし、
タカギ「僕はまだ何もしてないですよ・・・」
マクレガー「なにを言う、これで犯人像にたどりつける道が
見えてきた。間違いなく君のおかげだ。」
タカギ「そうですか、うれしいです」
マグレガー「君のサンフランシスコ滞在が長くなりそうだから、
 いいアパートをさがしてある。今日はもう休んでくれ」
  とつぜん、ガタガタ!! と物音。廊下の闇に
  響き渡る。
マグレガ-とタカギ「なんだ!!」
  タカギ、銃を構える。
  銃を構えたまま、廊下に出る。

24 警察署・廊下(夜)
  銃を構えたタカギ。
  闇に人影。
  マグレガ-、廊下のライトをつける。
--------------------------------------------------------(15)
  ライトに照らし出される後ろ姿の
  私服の黒人。
  黒人、後ろ姿のまま、手をあげる。
タカギ「動くな!」
マグレガ-「・・・マイクか?」
タカギ「マイク?」
  手をあげたまま、振り返る黒人。
マグレガ-「やっぱり、マイクじゃないか」
  マイクのそばに、たおれたゴミ箱。
マイク「暗かったから、ゴミ箱に足を
 ぶつけちまった」
マグレガ-「ジョン、銃を下ろしてくれ」
  銃をおろすタカギ。
マグレガ-「彼は、マイク、同僚の警官だ」
マイク「ジョン?はじめてだな。驚かせて悪かった」
マグレガ-「例の殺人事件の捜査のために
 東京から来てもらったんだ」
マイク「ああ、君がそうか」
タカギ「はじめまして。ジョン・タカギです。」
  マイク、タカギの側に歩み寄る。



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(ボディサバつづき)


---------------------------------------------------(5)
12 家族写真(昼)
   ゴールデンゲート・パークのハギワラ・
   ガーデン。
   マグレガー、となりに20代後半ぐらいの
   女性。2人の間に、2歳ぐらいの男の子。

13 マグレガー邸(内)
   その写真を見ているタカギにコーヒーを
   出すマグレガー。
マグレガー「私にも、幸せな家庭を夢見てい
 た頃があったんだよ。いや、今でも夢見てい
 る」
タカギ「この人は、あなたのワイフですか?」
マグレガー「実は数年前に、子供と出て行っ
 た。何年か会ってないよ」
タカギ「失礼しました」
マグレガー「いいんだよ。気にしないでくれ。
 仕事がひどく忙しかったんだよ・・・で、愛情
 を表現するのが下手だった私が悪かった。
 君、ワイフは?」
----------------------------------------------------(6)
タカギ「まだ、結婚してません」
マグレガー「東京警視庁から来た君の履歴
 を見た。アマチュア・ボクシングでは、かなり
 の成績らしいな。もてるだろう?」
  タカギ、苦笑いをする。
タカギ「実は俺、性格に問題があるんです。
 長い間、自分でも気がつかなかったんです
 が、どうもマザコンらしいんです・・・」
マグレガー「ハハハハハ!!」(大笑い)
  タカギ、マグレガーの大笑いにつられて、
  笑う。
マグレガー「君が好きになったぞ。じゃあ、
 君は天才かもしれん。マザコンの天才は
 多い。ジョン・レノンもマザコンだった。
 この国では、マザコンはもてるぞ」

14 サンフランシスコ市内(外、昼)
   雑踏。
15 マクレガーが運転する車の中(昼)
   助手席からタカギがマクレガーに話かける。
------------------------------------------------(7)
タカギ「で、いったい、何で俺がよばれたんです?」
  しばらくためを聞かせて、
マクレガー「理由は二つ・・・、君が以前サン
フランシスコに留学していたことと・・・」
  マクレガー、懐のポケットから写真をとりだし、
  タカギに見せる。
マクレガー「君ならこれが何を意味するか、私たち
 に教えてくれるんじゃないか、と思ってね」
  タカギ、写真を覗き込む。
マクレガー「最初、チャイニーズかと思って、そっち系
 の刑事に尋ねたんだが、どうもそうじゃないらしい」

16 殺人現場写真
  現場の様子・・・、血まみれ死体のそばの壁に、
  血で漢字が書かれている。

17 マグレガーの車の中
  写真を見ているタカギ。
  しばらくして、
-----------------------------------------(8)
タカギ「ああ、これはチャイニーズじゃない。
 ”天誅 ”  ”悪人正機 ” 
 ・・・日本語だ。」
マクレガー「(タカギの方を振り向き、)で、どう
 いう意味なんだ?」
タカギ「(写真を見つめたまま、)この二つには
 関連性はない。 
 ” 天誅 ” が  ” 罰を下す ”
 ” 悪人正気 ” が  ・・・・。
 しかし変だな。なんでこんなのがサンフラン
 シスコなんかに・・・?」
マクレガー「どういうことだ?」
タカギ「日本史を学んだやつなら、知っている。
 AD1192年に日本で鎌倉幕府という武家政権が
 誕生した。その鎌倉時代に創められた仏教の宗派の
 ひとつ、浄土真宗の決り文句だ」
マクレガー「その意味は?」
タカギ「悪人こそ救われる・・・」
  マクレガー、考え込む。
-------------------------------------------------(9)
タカギ「正確には、こういうことのようです・・・
 すべてを見通す、小さな悪でも見逃さず、人の
 人生全てを知っている、仏陀の目からすれば、
 善人などという者は、1人もいない。全ての
 人間は悪人である。しかし、仏陀は、そんな
 悪人でしかない、全ての人間を、絶対的に救い、
 至福の中に連れて行く、ということを約束している、
 という親鸞の仏教解釈である、・・・
 ということらしいです。
 ・・・かつて、日本で、
 これを間違ってとらえた人々が居て、
 {悪を行うと、救われる}と勘違いした人々が、
 極悪をつくし、親鸞はそれを嘆いた、
 と言われている、らしいです」
マグレガー「(かぶりをふり)じつは哲学は苦手なんだ・・。
だが、ときには、犯人は独自の哲学を持ってることがある。一体
 なにが起こっているのか、俺に説明してくれ。俺もサン
 フランシスコ市警につとめて、30年、ジャンキーや、
 同性愛者の愛憎関係、サイコパスの殺人事件、いろいろ
見てきたが、・・・今回ほど異常な事件は見たことな
 い」
--------------------------------------------(10)

18 警察署内(デスクの一角・夜)
  タカギとマクレガー以外に人はおらず、
  彼らのデスクの一角だけライトがつい
  ている。
  犯行現場の写真を見せながら、
マクレガー「今のところ被害者は全部で4人。
 犯行現場はそれぞれ、まったく別の場所で、
 被害者たちの職業も関連性がない。
 犯行手口から見て、同一犯の可能性は
 限りなく低い。しかし、いつも遺体付近に
 ” 悪人正機 ”  ” 天誅 ” の
 メッセージを書き残しておくのを忘れない。
筆跡は、それぞれ違う」
  タカギ、4つの写真に見入る。
   
19 殺人被害者写真#1
  フードを被った黒人が泡を吹いて倒れて
  いる。



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ボディサバ

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「ボディサバ」
脚本 by 高峰朝太 + ヒガシヨシマサ
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-------------------------------------------------(1)
1 サンフランシスコ国際空港(外・昼)
  滑走路にANA機が着陸する。

2 サンフランシスコ国際空港廊下(内・昼)
  日本人刑事、タカギが、荷物を持って、
  地下鉄までの連結廊下を歩いている。
  立ち止まるタカギ。
タカギ「BART地下鉄で、市庁舎のある、
 シビックセンター駅まで、来てくれ・・・、
 か・・・」
  タカギ、廊下内をきょろきょろ見回す。
  英語の指示板がいくつか見える。

3 地下鉄改札(内・昼)
  タカギ、改札に入る。

4 地下鉄列車内(昼)
  走る地下鉄。 
  タカギ、ぼーっと、車窓の外をみている。
-----------------------------------------------------(2)
5 シビックセンター駅(内・昼)
  「シビックセンター」看板がある。
  タカギが地下鉄を降りる。

6 シビックセンター駅(外・昼)
  青い空。
  駅の側に市庁舎が見える。
  タカギ、市庁舎を見ている。
  露店のホットドッグ屋台で、ホットドッグ
  を売っている兄さんがいる。
  タカギ、ホットドッグを買う。
  ホットドッグをかじりながら、市庁舎を見て
  いるタカギ。
  タカギに近寄る影。
  タカギの肩をポンとたたく手。
  振り向くタカギ。ホットドッグのケチャップ
  が鼻に付いている。
手の主(マグレガー)「Mrタカギ?」
タカギ「イエス」
  マグレガー、サンフランシスコ市警の手帳を
  タカギに見せる。
---------------------------------------------------(3)
タカギ「マグレガーさん?」
マグレガー「私がサンフランシスコ市警マグレガー
 刑事だ。東京警視庁からのEメールに君の写真が
 添付されていた。ようこそ、サンフランシスコへ」
タカギ「私は、この街をよく知ってます」
マグレガー「そうだったな、ミスター・ジョ・・・
 ジョサブロウ(序三郎)・タカギ」
タカギ「そうです。この街には学生のころ3年住み
 ました。そのころは、ジョンと呼ばれてました」
マグレガー「ジョサブロウ・・・は難しい。私も
 ジョンと呼んでいいかい?」
タカギ「OKです」

7 サンセット住宅街・マグレガーの家(外・昼)
  マグレガーの車がつく。
  車からタカギとマグレガーが降りる。
  マグレガー、タカギを家へ招く。

8 マグレガーの家(内・昼)
マグレガー「コーヒーを作るから、テーブルに
 着いててくれ」
---------------------------------------------------(4)
タカギ「どうも」
  タカギ、テーブルに着く。テーブルの上に
  写真のアルバムが置いてある。
タカギ「これ、見てていいですか?」
マグレガー「ああ、アルバムか。いいよ。昨日は
 思い出にひたってたんだ。もう、そんな年齢さ」
  タカギ、アルバムを開く。

9 写真1
  オリンピック射撃種目の金メダルを
  受賞するマグレガー。

10 写真2
  市長から表彰を受ける、警官制服の
  マグレガー。

11 マグレガーの家(内・昼)
  アルバムをさらにめくるタカギ。
   タカギの目にひとつの写真が留まる。



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マーク

LOUVYCORP.


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ルウヴィ・ジャポン

LOUVY JAPON ルウヴィ・ジャポン SITE


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